私たちの暮らしの中には、様々な化学物質が使われています。新築やリフォームした後の建物に入ったとき、人によって塗料などの匂いを臭いと感じたり、場合によって頭痛・筋痛・不眠・目や鼻、のどの刺激症状が起こります。

こうした体調不良は、揮発性の有機化合物による室内空気の汚染が原因で起こることから、『シックハウス症候群』と呼ばれます。近年、住宅が高気密化し、化学物質を放散する建材や塗料が使われるようになったことから発生した病気といえます。

汚染された家から離れて症状が改善することもありますが、さらに症状が悪化し、家から離れても化学物質などに体が反応する、『化学物質過敏症』に発展する場合があります。

このようにシックハウス症候群と化学物質過敏症には密接な関係があり、重複することもあるため、治療としては、疑わしい化学物質から離れることが第一です。

シックハウス症候群は、医療だけで解決できる問題ではありません。建築を行う施工業者との密接な連携が極めて大切になってきます。化学的な負荷という面では家ひとつ見ても、建材のほかに家具や家庭用品など様々なものに知らないうちに室内空気を汚染する化学物質が含まれている場合があります。
天然にも化学物質は存在します。しかしもともとこうした物質を解毒する為の代謝経路を私たちは持っています。しかし、近年急激に増えた人工的化学物質も同じ経路で代謝されるため、現代人の身体への負担は増えているのです。

体に取り込む化学物質の量をゼロにすることは不可能ですが、注意して減らすことはできるはずです。この先、どう化学物質と共存するか、それが私たちに与えられた課題なのです。